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宝塚歌劇団雪組のミュージカル「Samourai」が大阪の梅田芸術劇場シアター・ドラマシティで上演されている。
幕末直後にフランス・パリに渡った実在の侍、前田正名が、坂本龍馬から受け継いだ刀で、パリで戦うという月島総記のフィクション小説「巴里の侍」を、宝塚歌劇がミュージカルに仕立てた。
正名の波乱万丈な青春時代を、トップスターの音月桂がさわやかに熱演していた。

幕開け、和太鼓の音が鳴り響き、音月桂、早霧せいなと緒月遠麻が扮する紅白の連獅子が登場。
新春の華やいだ雰囲気からスタートした。

侍の世が終わろうとしていた江戸末期、薩摩藩出身の若き武士、正名(音月)は龍馬(緒月)と出会う。
ある時、龍馬は文明国フランスへ行く夢を正名に語り、その夢の大きさに感銘を受けた正名は、龍馬と共にフランス行きを目指す。
しかしその後、龍馬は京都・近江屋で暗殺されてしまう。

江戸幕府が倒れて間もなく、正名は龍馬の志を受け継ぎフランスへ留学。
舞台は、燕尾服の紳士やカラフルなドレス姿の淑女たちが「モン・パリ」の音楽にのせて歌い踊るフランスへ。
親日家のモンブラン伯爵(飛鳥裕)の世話になる正名は、パリの邸宅に着いて早速、断髪と着替えをすることになった。
原作では使用人にまげを切ってもらい、さっぱりとして終わるところだが、舞台では正名自らが思いきりよく刀を入れる。まげに袴の武士の姿から、散切り頭にタキシードの姿に着替えて再登場した音月は、思わずドキッとするほどの変貌ぶりだ。

その後、プロセイン(後のドイツ帝国)とフランスの戦争(普仏戦争)が勃発し、大国フランスがまさかの降伏。だがその裏には、フランス軍上層部の思惑が潜んでいた。フランス正規軍の隊長のレオンを演じるのは、大湖せしる。冷酷な少佐を、表情1つ変えずに好演していた。

普仏戦争が引きがねとなり、パリ・コミューンが成立。パリ・コミューンとは、1871年、パリで誕生した史上初の民衆による革命政府のこと。72日間の短い期間だったが、後にマルクスの共産主義運動やレーニンのロシア革命などに影響を与えた。

正名も市民兵に志願して、パリ市民と共に戦うことに。舞台上では戦闘シーンが目まぐるしく展開していく。
原作に忠実な筋書きとはいえ、銃砲の音とともに市民が次々と倒れていく後半は、観ていて暗い気分になることも。
しかし、これも悲惨な事実を強調している演出とみることもできる。桂圭男著「パリ・コミューン」(岩波新書)には、「『血の週間』を含めて5月末までに殺された市民は約3万人と推定され…」と書かれている。
厳しい展開が続く中での救いは、キャストたちのひたむきさ。
それぞれのまっすぐな強さは、暗闇の中に見える一筋の光のようだ。

音月の演技からは、勇敢で高潔なサムライ魂が強く感じられた。
流麗で安定感のある歌声からも、正名の思いが伝わってくる。音月の軍服の上に白い羽織をまとった「巴里の侍」姿は目を引く。
このミスマッチな2種類の服を格好良く着こなせるのは、やさしい雰囲気と気品をあわせ持つ音月ならではだろう。

早霧が演じる渡会晴玄は、安芸藩出身の留学生。
同じパリで学ぶ日本人として正名と友情を深めていく。
2人のかけあいはテンポがよく、仲の良さが伝わってくる。
早霧の軍服姿にはどこか儚さが漂い、つい見とれてしまうほどの麗しさだ。
コミカルなキャラクターの中に優しさが垣間見えて、こんな親友がいたらいいなと思ってしまう。

緒月は今回、坂本龍馬と市民兵の隊長フルーランスの2役を演じている。
龍馬は威勢がよく、フルーランスは頼もしい存在で、どちらも貫禄と人情がにじみ出ていた。

モンブランの姪のマリー(舞羽美海)は、可憐さと強さをあわせ持つ。
最初は正名たち日本人に対して嫌悪感をあらわにしていた気の強いマリーだったが、救護隊に入ってからは、精神力や芯の強さも表れていた。

そしてフィナーレは、燕尾服と鮮やかな赤紫のドレスに身を包んだキャストたちによるダンス。
最後は「モン・パリ」の歌とともに、一気に春が来たような明るい笑顔が咲いた。

パリ・コミューンで必死に戦った市民の姿と、当時の人々を懸命に演じる雪組メンバーの姿が重なって見えた舞台だった。




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