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宙組の若手スター愛月ひかるは、今公演「ミュージカル 華やかなりし日々」で退団するトップスター大空祐飛に、食らいつく日々だ。
5月1日、兵庫・宝塚大劇場で行われる同作新人公演に主演が決まった。
同組の新人公演では、直近4作中、3度目の主演。
だが、若武者の胸中には焦りがあった。
支えになったのは、あこがれの先輩・大空の存在だった。
「最後まで一挙手一投足を見逃さず、統率力、人間性も見習いたい」。
トップの品格とカリスマ性を学び取る。東京宝塚劇場は6月14日。

偉大な先輩のラスト公演。
大空が持つダンディズム、哀愁が際だつ作品だ。

「最後のチャンス。しっかり大空さんの男役像を、吸収させていただきたい。大空さんがすてき過ぎて、私が演じたら? って、正直、不安はあります」

だが、たくましさも身についた。
入団6年目。
順風満帆かに見えるが、本人は焦燥感を味わっていた。

「辞めたいと思うぐらい悩んだ時期もありました。いつも焦りは感じていました」
というのも、同期(93期)には、首席入団ですでに昨年、バウ公演主演も果たした雪組の彩風咲奈、元プロ野球投手の山沖之彦氏を父に持つ花組の芹香斗亜、娘役では雪組トップ娘役の舞羽美海らがいる。

「活躍している同期の中で、私は出始めたのが遅くて...」。
スロースターター。募る不安。
殻を破るきっかけが、大空だった。

3年目の09年、トップ大空の大劇場お披露目公演「カサブランカ」の本公演で役がつき、新人公演では大役を得た。
次の大劇場作「トラファルガー」は、本公演で大空の息子役に抜てき。
その次の「誰がために鐘は鳴る」で新人公演初主演を果たした。

「カサブランカのオーディションは『ここで絶対、つかまなきゃ』って思っていました。とにかくチャンスが欲しかった」

念じた通り、ワンチャンスをモノにした。
もともと、土壇場で力を発揮するタイプだ。
子どものころ、運動会でも最後には1着をとった。
稽古でできなかったことが、舞台でこなせることもしばしば。
いまも、演出家から「本番に強いね」と言われるという。
そして、大空からもらった言葉で、勇気は倍増した。

『愛ちゃんは宝塚が好きなとこが、いい意味で舞台に出ている。お客さんが喜ぶところを分かっている』と。いまも(ファンだった頃の)気持ちを大切に演じています」

2歳のころから、母の膝の上で観劇。4歳からクラシックバレエを習い、当初は「見るのが好き」だったが、幼くして自らを「客観視」する能力を持ち合わせていた愛月は、早々と将来の道を決める。
「バレエをするには、身長が伸びすぎてしまった」
小学5年のとき、目標を宝塚に定めた。
一発合格。
最初から受験は1回と決めていた。

「すごくファンだったからか、なぜか『1回で合格する人じゃないと、成功しない』と勝手に思っていた。生意気な小学生でした(笑い)。不合格だったら(長身を生かして)モデルになろうと決めていました」

心は熱くなっても、冷静さは失わない。
それは今、演技者として生きる。
「お芝居をしながら、自分がどう見えているかを、もう1人の自分が見ています」。

本来の自分を取り戻した。
前作「クラシコ・イタリアーノ」では、2番手役を演じ、また勉強になった。

「自分は、周囲に支えられていた。今度は、私が、主役を支えたい、と。今まで自分のことだけで必死。ようやく舞台全体を考える余裕が出てきたのかな」

かつて自分があこがれた男役が、目指す男役像でもある。
「品格と宝塚らしさ。男役の品や色気、若干そこまでやるの? というぐらいのくさい部分も。それをなくしたら、宝塚ではなくなってしまう」。

品格は、普段から身につけていないと出ないと考える。
「日頃の行いや服装、すべてがつながっていると思う」。
男役の美学を追究し続けてきた大空こそ、生きた教科書だ。
特に、ダンディーで、男の色気を漂わせるスーツ姿は絶品だ。

「私は(衣装がスーツの)前回、歩き方やしぐさがさまになっていないと(上級生に)指摘されました。これまで軍服や着物、コスチュームに助けられていた。自分に対して悔しかった。大空さんは、ポケットに手を入れて立っているだけで格好いい。できることなら、ずっと見ていたい...。人を引きつける力も尊敬しています。その姿をしっかりと目に焼き付けたい」



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